未分類

3月17日「最高の終活」

「ありがとう。何べん言っても言い足りぬ。病はありがとうの泉なりけり。」
 仕事帰りの父が病室を訪ねてきたのですが、椅子に座ってウトウトと船を漕いでいるのを見ながら、母の冨士子が末期がんの病床で作った詩です。
 退職直後、今までできなかったことや旅行をする事を話していた母が自分の病状を知った時、あれほど取り乱していた母が、徐々に平安のうちを歩むようになっていったのを見て、信仰による天の御国への確かな希望とは、人をこれほどまでに変えてしまうのかと驚いたものです。世を去る前の日、目を見開き、口を開けたままで、意識がなかった母が、ベッドサイドに集まった親戚の人々を前に急に起き上がり、「今まで出会ったすべての人に感謝します。」という言葉を発した時のことは今でも忘れません。最後の力を主にいただいたのでしょう。
 終活という言葉が当たり前のように叫ばれるようになり、QOLという患者の心の変化や生活の質を重視する考え方が当たり前になった今でさえ、それはこの地上の終りをどう迎えるかに集約されています。しかし、終わったあと、果たしてどこに行くのかという備えをしている人はいるでしょうか。
 主の十字架と復活が歴史的事実となった今、私たち主を信じる者たちには最高の終活がすでに与えられているということは、何という平安でしょうか。