宣教
10月6日「主の恵みの年」
ルカ4:20~21
近代社会は借金を返せなくなった人に対してとても寛容になりました。古代ローマでは自己破産すると奴隷にされるのが一般的でした。ローマの繁栄は、戦争捕虜や借金で奴隷になった人たちの労働力に大きく依存していて、ローマ市民はその労働によって娯楽や文化活動に専念することができました。
今日の聖書箇所に、イエス様が故郷のナザレに戻り、奴隷の解放と借金帳消しを宣言する場面が描かれています。これは旧約聖書のレビ記に記された、奴隷が解放され、買い取られた土地が返還される「ヨベルの年」についての教えに基づいています。イスラエルの歴史上、五十年に一度やって来るこの夢のような年が実現したという記録はありません。ユダヤ人はこの教えを単なる理想として考えていたようですが、イエス様は「その時は今だ」と言って、ヨベルの年が本当に来たと宣言しました。
奴隷生活や借金地獄とは無縁だと思うかもしれません。しかし、人間として生まれた以上、逃れられないのは人間関係の悩みや、自己破壊的な感情から来る心の抑圧です。イエス様は外面的な解放に限らず、人の内側の解放をも伝えています。「羊(人)が命を豊かに受けるために来た」と語ったイエス様の宣言は、今の私たちにも波及する物です。